両者の差異は、名護町家計には全くみられなかった保健衛生費、育児教育費、交際交通費、貯蓄といった項目が月島労働者家計にみられることです。
・・・つまり、消費構造において明らかに月島労働者家計は異なっているのです。
・・・とはいえ、「スラムと工場労働者とではその費目の配分が越えがたい一定の明確な幅をもっておこなわれ」ました。
しかしながら・・・
「明治末期においては、工場労働者の生活水準が『貧民窟』住民の生活水準とほとんど差異がないが、少なくとも賃金の大きさ、消費額としての水準ではまったく同等といってよいという事実」
・・・は忘れられてはならないのです。
これらの事実から、月島労働者家計において、資本主義的生産様式下における消費構造の多様化がかえって生活水準を引き下げる作用をなしていることがうかがえるのです。
換言すれば・・・
自給自足の生活から商品生産社会への適応において月島労働者にかぎらず、労働者一般の家計はいまだその賃金額が生活賃金としての確証をもたらしていなかったといえるのです。